遺言書の種類と書き方
何歳から遺言できるのか 遺言を書けるのは、15歳からです
なぜ遺言書が必要か 相続が発生すると、残された家族(相続人)が遺産分割の話し合いをすることになりますが、この際「指針」となるのは
「法定相続分」です。法定相続分とは、「妻が半分とって、残りの半分を子供たちで分ける」「配偶者がいない場合は
子供たちが均等に分ける」といった民法の規定にしたがって決まる「取り分」を言います。

しかし、遺言を書く側に「法定相続分と異なる分割をさせたい」という意思があるケースもあります。

例えば3人の子供がいる(配偶者はいない)ような場合、法定相続分は各人3分の1ずつになります。
しかし3人のうち、長男は父親の家業をずっと手伝ってきた、一方、次男と三男は結婚後独立し、
父親の面倒はほとんどみていなかったという場合、差をつけたいと思うのが当然でしょう。このような場合は、
遺言書によって「長男に多く相続させる」旨を意思表示しておく必要があります。
また、法律上相続権がない人(孫や「息子の嫁」、お世話になった知人など)に財産を譲りたいこともあるでしょう。
この場合も遺言書が必要になります。

実務上よくあるのが、「財産の中に不動産が多いケース」です。例えば土地が6カ所あり、子供が3人いるような場合、
「それぞれの子供に2カ所ずつ」と単純にはいきません。それぞれ面積も形状も違う(土地の「価値」が違う)でしょうから
、2カ所ずつ分けても公平にはなりません。しかも土地はお金と違って簡単に分けられませんので、
完全な「公平」を実現するには「共有」(全部の土地を子供3人の名義にする)か「売却」しかありません。

とは言え「共有」にすると、将来、処分や利用形態変更を行う際、全員の「合意」が必要になります。
その「合意」が得られずトラブルが起こってしまうことが多いのです。
また「売却」についても、先祖代々受け継いできた土地などは手離すことに抵抗もあるでしょう。
不動産を多く持っている方は、「あの土地は誰々に相続させ、またあの土地は誰々に相続させる」ということを遺言で残しておくべきです。
遺留分には注意が必要
民法では、法定相続人が必ず相続することができるとされている最低限の相続分が保証されています。これを「遺留分」と言います。

遺言によって遺留分未満の財産しかもらえなかったときには、1年以内に「遺留分の減殺請求」を行うことができます。遺産3億円で子供が3人というケースにおいて、遺言で「長男に全財産を譲る」と書いていたとしても、次男・三男は5000万円を長男からもらう権利があるのです。

そもそも、遺言書があったとしても、相続人全員が合意すれば、遺言書と異なる内容の分割も可能です。遺言によって「完全に自由な分割ができる」というわけではないということです。
パターン1 配偶者だけがいる場合
法定相続人 遺留分
配偶者 被相続人の財産の1/2

パターン2  配偶者と子がいる場合
法定相続人 遺留分 備考
配偶者 被相続人の財産の1/4
被相続人の財産の1/4 子が複数人いる場合は左記1/4を均等に分ける

パターン3  配偶者と親がいる場合
法定相続人 遺留分 備考
配偶者 被相続人の財産の1/3
被相続人の財産の1/6 父と母が両方いる場合はそれぞれ1/12ずつ

パターン4  配偶者と親がいる場合
法定相続人 遺留分 備考
被相続人の財産の1/2 子が複数人いる場合は左記1/2を均等に分ける

パターン5  親だけがいる場合
法定相続人 遺留分 備考
被相続人の財産の1/3 父と母が両方いる場合はそれぞれ1/6ずつ

※兄弟姉妹には遺留分はありません。したがって、遺言によって「財産を相続させない」ということも可能です。
遺言の種類
自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
難易度 最も簡単 難しい やや難しい
費用 ほとんど掛からない 公証役場手数料(16,000円〜)、証人依頼代 公証役場手数料(11,000円)、証人依頼代
証人 不要 二人必要 二人必要
書く人 本人(全て自筆)
 タイプライター(無効)
 ワープロ(無効)
 ビデオテープ(無効)
 録音テープ(無効)
公証人(口述筆記) 誰でもよい
 タイプライター(有効)
 ワープロ(有効)
 ビデオテープ(無効)
 録音テープ(無効)
保管 本人、推定相続人、遺言執行者、友人など 原本は公証役場、正本と謄本(写し)は本人、推定相続人、遺言執行者など 本人、推定相続人、遺言執行者、友人など
秘密性 遺言の存在、内容共に秘密にできる 遺言の存在、内容共に秘密にできない。証人から内容が漏れる可能性がある。 遺言の存在は秘密にできないが、遺言の内容は秘密にできる
紛失、変造の可能性 共にある 紛失の場合は再発行できる、変造の可能性はほとんどない 共にある
検認 必要 不要 必要
特に有利な点 費用がほとんど掛からない。証人が必要でなく、いつでもどこでも簡単に書ける、新たに作りなおす事も容易にできる。 家庭裁判所での検認が必要ない。公証人が作成するので、無効な遺言書となること、変造されることが少ない。紛失しても謄本を再発行してもらえる。 公証役場に提出するので、作成日が特定できる。費用があまりかからない。
特に不利な点 紛失、変造、隠匿(隠すこと)等の可能性が高い。遺言の要件を満たしていないと無効な遺言となる可能性がある。家庭裁判所での検認が必要。 費用が余分に掛かる。 遺言の要件を満たしていないと無効な遺言となる可能性がある。家庭裁判所での検認が必要。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、全文自分で書いて保管などの管理も自分でするというものです。
他の遺言のように第三者が関与することもないので手軽に作成することができる遺言です。
しかし、書き方に不備があったり、法律上詐欺や強迫があった場合には無効になりますので
法律上の
ルールをきちんと守る必要があります。



ルール1.
 全文自分で書く、「自署」といいます。
         自筆証書遺言は全文自分の手で書かなければいけません。ワープロ等で打った遺言書は無効で認められません。
   
ルール2. 日付けを入れます。
         日付のない自筆証書遺言は、自筆で書いた日付けを入れて下さい。平成16年8月吉日など日付が特定できない
         書き方は、無効となりますので注意しましょう。

ルール3. 書き方や紙の質、筆記用具は自由です。
         用紙の大きさや、紙の種類、書き方なども決まりはありません。ボールペンや筆など消えないものがよいでしょう。

ルール4. 署名と押印をして封をしましょう。
         署名は、自署することが必要です。本人を特定できるのであれば、ペンネームでもOKです。
         そして、押印しますが、印鑑は認め印でもよいのですが、後の人のことを考えるなら実印が確かでしょう。
         最後に、封筒に入れて、封印をして出来上がりです。

   しかし、自筆証書遺言は家庭裁判所の
検認を受けなければ有効な遺言書とはならないことに注意しましょう。
 
公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証人役場の公証人が関与するものです。遺言者は、遺言者は公証人に口頭で遺言の容を説明し、
それをもとに公証人が作成します。そのために、公正証書遺言は遺言書の中で最も安全で確実とされています。
遺言書に書かれた内容は、本人の意思であることが公証人により確認されているために、裁判所の検認手続きは必要と
されていません。公正証書遺言は、2人以上の証人の立会いが必要となります。しかし、この証人については、
以下のような要件が求められています。この要件に該当するものが証人になった場合には、その遺言は無効となります

証人となれない者(民法第974条)
   a.未成年者
   b.推定相続人、受遺者及びその配偶者並びに直系血族
   c.公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び雇人

   ■公正証書の作成手順■
   
2人以上の証人を選任する
            
   公証人役場の公証人の前で遺言者が遺言内容を口頭で述べる。
            
   公証人は遺言の内容を書き留める。
            
   公証人は遺言者の発言内容を読み上げる。
            
   内容に間違いのないことを確認した後、遺言者、証人が記名押印する。
            
   公証人は法律で定められた方式で作成された旨を記載し、記名押印する。

   作成された遺言書は正本を遺言者本人に渡し、原本を公証人役場で保管します。
   保管の期間は、原則80年ですが、ほぼ永久保管になっているようです。
   なお、公正証書の作成費用は、財産と地域により少しずつ異なります。


秘密証書遺言 秘密証書遺言とは、遺言の存在は明らかにして、遺言の内容を秘密にしたい場合に作成されます。
ただし、公証人が関与するために手続きにやや時間が掛かります。さらに、公証人は、遺言内容をチェックできないため
相続が起こった場合に紛争になるケースがままあります。

   ※ なお、秘密証書遺言は、公証人の関与がありますが自筆証書遺言と
     同様に家庭裁判所で
検認を受ける必要があります。

   ■
秘密証書遺言の作成手順

 
 遺言書を作成して署名押印する
            ↓
  
自分で封筒に入れ遺言書に押印し使用した印鑑で封印をする
            ↓
  
証人2人を選任し、公証人役場に行く
             
  公証人に遺言書を提出し、自分の遺言書であることを申述する
            ↓
  
公証人が日付と遺言者の申述を
封紙に記載する
            ↓
  遺言者、証人、公証人は、各自記名押印する

  
なお、秘密証書遺言による遺言書は、遺言者自身が保管することになります。

  *
封紙とは、秘密証書遺言を入れた封筒の上に貼る公証人の証明書です。
特別方式遺言
 
死亡危急者遺言 船舶遭難者遺言 伝染病隔離者遺言 在船者遺言
遺言の要件 遺言者が危篤になり急いで遺言をしなければならないときに認められ、病気や怪我などによる場合の死亡危急者遺言と船が遭難して危篤になった場合の船舶遭難者遺言があります。
普通方式の遺言ができる状態になってから6カ月間生存した場合は、この遺言は無効になる。
遺言者が隔離された場所にいるために認められ、死亡の危急時である必要はない。

伝染病にかかり行政処分により交通を断たれた場所にいる場合の伝染病隔離者遺言と船舶中にある場合にできる在船者遺言があります。

普通方式の遺言ができる状態になってから6カ月間生存した場合は、この遺言は無効になる。
遺言作成の日から20日以内に家庭裁判所の確認手続 遺言作成の日から遅滞なく家庭裁判所の確認手続
書く人 証人(口述筆記) 証人(口述筆記) 本人(代筆でもよい) 本人(代筆でもよい)
証人
立会人
3人以上 2人以上 警察官1人・証人1人以上 船長または事務員1人・証人2人以上
署名・押印 証人(3人以上)の署名・押印 証人(2人以上)の署名・押印
(署名できない者がいる場合、他の証人がその事由を付記する)
全員の署名・押印
(署名できない者がいる場合、他の証人・立会人がその事由を付記する)
全員の署名・押印
(署名できない者がいる場合、他の証人・立会人がその事由を付記する)



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